ネタバレしたくないので簡単に。
人物がそれも主人公から見た人物が時間を掛けてえらい丹念に描いてある。これが文学というのものだろう。
同じような語り口で「日の名残り」では時代が直接的に描かれていたのに対し、 「わたしを離さないで」では、さまざまな出来事から描かれる(主人公が想像する)人物の描写から彼らを翻弄する世界を間接的に浮かび上がらせているようだ。 これまで2冊読んだだけだけどこの作者は安直な手口に走らないのだねえ。
登場人物の共感力で世界を描いている分、読み手も共感力が要求されるかもしれない。 そして、振り返って今の日本はどうなのよと当然思うわけでした。